教授職就任にあたり

 「三年先の稽古」・・・相撲界で昔から言い習わされている言葉だ。相撲の勝ち方は様々であり、立ち合いで変化をつけて相手を翻弄したり、打っ遣りのような土俵際での小技を使ったりする力士も多い。しかし、大横綱として成長してゆくためには、小手先の妙技で目先の勝ち星を増やすことにこだわるのではなく、三年先をにらんで、がっぷりと四つに組み相手を打ち負かす本物の底力を身につけなくてはならない。

 私の職務である研究と教育もまた同じであろう。最近の学会の若い研究者にしばしば見受けられることだが、些末な問題に関し、適当に統計ソフトをこねくり回して、「こんな結果が出ました!」と発表する。しかし、研究者の本当の仕事は時代の表層ではなくその奥底にある水脈を解き明かすことにあると思う。26歳の時、師事した柏木重秋先生はこのようにおっしゃった。「研究者として最も大切なことはライフワークとなるテーマを見つけることだ」と。幸いにも、私はブランド価値、顧客起点のマーケティング戦略、マーケティングが有効に機能する組織のありようなど、根源的テーマに辿り着くことができた。このことは私の研究者人生を豊かにし続けている。教育についても同じだ。その場限りで学生に支持を得たければ、今の学生が喜びそうなネタを並べてゼミを組み立てることもできる。しかし、それが本当の教育と言えるであろうか?大人たちの多くが一度や二度は感じたことがあるだろう。「あの時はわからなかったが、振り返って考えると、あの時の先生の言葉の意味が今になってわかる」と。教育の効果は後々出てくるものである。今日聞いて明日役に立つことなど、明後日には使えない薄っぺらなツールに過ぎない。これからも徒に世間や学生に迎合することなく、事の深層を見つめて伝える、そんな研究と教育に邁進してゆきたいと思う。今後ともよろしくお願い申し上げます。

平成28年4月1日

有吉秀樹

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