第12期生卒業に際して

毎日のように有名人のブログやSNSの投稿が批判や炎上に晒されている。かつてならば、思い切った過激な発言や偏りのある内容など、一見すると賛同しにくいものであっても、内輪話として喫茶店や酒場の隅に消えていった。気心の知れた者同士、発言の背景や会話の文脈から発言者の意図を推し測れる範囲にしか、それらは伝播することはなかった。ところが、インターネットという質の悪い“おもちゃ”の登場により状況は一変した。半永久的に残るだけではない。さらに事情を知らぬ者たちへ拡散してゆく。誰もが発信者となり得るはずの時代なのに、自由な発言に及び腰にならざるを得ないとは何とも皮肉な話である。もちろん、発信者側のリテラシーの向上は大切だ。ただし、自らの発言の影響力を気にする機会の少なかった多くの名もなき民がインターネットと上手に付き合えるまでには多少時間がかかるかもしれない。そこで、私が思うのは、受信者側のリテラシーの問題である。私たちはどこかで“賛同”できないものは“理解”できないとしてすべて非難・排除してしまってはいないだろうか。受け入れられるストライクゾーンの狭さは、長期的に見れば、自己の成長の機会を奪う。私が専門としているマーケティングは消費者の心理を深く“理解する”ところから始まる。理解することは“賛同する”こととは違う。確かに、全く異なる価値観で行動している消費者に対し、賛同する気持ちにはなりにくいが、対象に棲み込み本気で向き合う姿勢がなければ、マーケティングは成功しない。表面上の賛否に心揺さぶられることなく、客観的に相手を理解するためには、自分の軸をしっかり持っていることが必要である。私はマーケティングを通して、自分の軸を持ちながら、相手と本気で向き合い、何が相手のためになるのかを考えられる真の思いやりの大切さを痛感した。グローバル化が進む現代社会において、年齢、性別、国籍など価値観の違う相手と対峙しながら成果を上げてゆくことが求められる。今期卒業する9名の12期生にとって、マーケティングを学んだことがその礎石となることを期待してやまない。卒業おめでとう!

平成31年3月吉日
獨協大学経済学部教授
博士(学術)
有吉 秀樹

今年度のHistoryはFacebookで更新中
PAGE TOP